僕はギターが上手ではありません。
でも歌うのが好きです。
そんな僕に、ギターの神様が舞い降りたとしか思えない、
そんな奇跡の夜のことをお話しようかと思います。

僕が酔っぱらってギターをなくしたことは
以前のブログで書いた通りです。
色んな人から「ネタでしょ」とか突っ込まれましたが、ホントなんです。

ギターが生活の一部、というほど、
僕はギターを弾いてきたわけではありません。
練習したり、習ったことなど全くありません。
たまーに、歌いたくなったときに、
ポロンと鳴らして、歌う。その程度のものだったのです。

しかし、ギターのない毎日は、思った以上に寂しいものでした。

ある日、僕はツイッターでつぶやきました。
「ギターが弾きたい」。

すると、ご近所さんが二人も反応してくれました。
使ってないギターがあるから、どうぞお使いください、と。

僕は今晩7時前、そのうちの一人、Yさんの家へギターを引き取りに行きました。
いただいたギターは、Yさんが言うような「不要な」代物ではなく、
Morrisの素敵なギターでした。
「『ゆず』ってステッカーをはがしたあととかありますけど、
 それでもいいですか?」
とのことでしたが、
僕はゆずが嫌いでもないし、むしろ「ゆず胡椒」が大好物なので、
どうやって「ゆず」のあとに「胡椒」というステッカーのあとをいれようかと考えながら
ホクホク顔で家路へと就きました。

途中、「とみや」さんへビールを買いに立ち寄りました。
裸のギターを持った僕を見て、ご主人と奥さんが
「ギター見つかったの?」と尋ねました。

僕は「いや、ご近所さんが譲ってくれたんです」と答えました。
「要らないという割に、いいギターなのですごく気に入っているんです」
という二言、三言の会話でした。

すると、レジカウンターの脇で日本酒の試飲をしていたおじさんが、
僕にこう言いました。
「もしかして、あなた最近、ギターをなくしたのかね」

「はい。酔っぱらって、どこかに置いて来てしまったんです」。
僕は答えました。

おじさんはしばらく考えた後に、こう言いました。
「あなたのかどうか分からないけど、僕は最近、
 ギターを拾ったんだよ」

おじさんの話によれば、
ある土曜日の夜、帰宅すると駐車場にギターと男が横たわっていたそうです。
男の方は大いびきをかいていたそうで、
起こそうとしたけど、ちっとも起きない。
いったん、自宅に入り、もう一度、駐車場に出てみたら、
そこにはギターだけが置き去りにされ、男は消えていたそうです。

そんな男は、僕以外にいないでしょう。
おじさんは、「軒下に立てかけておいたけど、まだあるかなぁ」と言いながら、
僕を自宅まで連れていってくれました。
西の方向です。

最後の記憶があった「こまつや」さんから見て、わが家は北北西。
しかし、僕がおじさんの後をついて歩いている方向は、
「こまつや」さんから見たら真西です。

西長野のとある入り組んだ路地で、おじさんは立ち止まりました。
「あ、まだあった」。
薄暗い軒先に佇んでいたのは、紛れもなく僕のギターでした。
15年間つかず離れずやってきたMorrisのギターです。

僕は深々とおじさんに頭を下げ、礼を言いました。
少し涙ぐんでしまいました。

帰りがけ、「とみや」さんに寄ると、
「いやー、あの人はね、普段は夜9時ごろに来られるんだよ。
 珍しく、この時間に来たんだよねー。
 しかも、買い物済んじゃっていたし、おれが日本酒の試飲を勧めなきゃ
 安斎さん来る前に帰っちゃっていただろうねー。
 安斎さんがギター持ってなきゃ、あんな話もしなかっただろうし、
 色んなことが数十秒ずれていたら、あり得なかったことだよ。すごいことだねー」
と、ご主人。


僕はギターが上手な訳ではありません。
歌うのは好きですが、胸を張って「ミュージシャン」と言える人がいれば、
端っこで見ている人間です。
僕がギターを持って行くのは、そこに音楽がなくて、
でもあった方がいいんじゃないかと思う時だけでした。

たとえば西之門市、
たとえば1166バックパッカーズのラウンジ、
たとえばボンクラの花見、
たとえば遊歴書房のオープニングパーティー(これは要らなかった説あり)。

しかし今日、僕は素敵なギターを二つ並べてみて、
これはギターの神様が「君はギターを持って歌うべきだ」と
言っているような気がするんです。

それはミュージシャンとして、誰かに感動を与えるようなものではなく、
「枯れ葉も山の賑わい」的な、これまで僕が守ってきたスタンスで。

そして僕は思うのです。
そうであれば、僕はもっとスキルを上げるべきだと。

敬愛するミュージシャン・風博士は言いました。
「安斎くん、楽器はプラクティス、プラクティス、プラクティスだよ」。

折しも僕はもうすぐ修士論文という足枷が外れます。
プラクティス、プラクティス、プラクティス。
ギターの神様もそう言っているような気がした、そんな奇跡の夜でした。

guitar2.jpg

(夫記)

(門前ソングスプロジェクト
「遊歴書房のテーマ」、「1166のテーマ」、「ひふみよのテーマ」と
 3曲できました。次こそ「箱山ふとん店」をちゃんとつくるかな)

安斎家のフツウな門前生活

子連れで門前に引越してきた一家の暮らしぶりを徒然なるままに綴ります。
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